読書

ムツゴロウ86歳

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私が高校生のころだったか、「ムツゴロウの青春記」を読んで、世の中にはスゴい天才がいるもんだなぁ、と感動した記憶がある

彼が高校生のころ、数学の授業や教科書が易しすぎて詰まらないので、高木貞治「解析概論」を読んだら、大学入試問題が幼稚園レベルに思えた、というようなことが書いてあった

この話に感動した私は、さっそく本屋で買ってきて読み始めたが、とても高校生が読めるような本ではなかった

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彼は動物好きで有名だが、実はギャンブラーとしても有名で、私はむしろこっちが彼の正体だと思っている

彼は初対面の猛獣にも無防備で近づくことが多く、そのために命に係わるような事故もあったし、右手の中指の先をライオンに噛み千切られたりしている(→)

おそらく彼の天才の一側面として、極端なリスク嗜好があり、それが彼の動物好きの背景にもあるのではないかと思っている

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ライオンの頭を無防備になで、ワニの口に笑顔で頭を入れる。

ライオンに右手の中指を食べられてもまったく懲りる気配すらない。

“動物愛”という枠を大きくはみ出した畑さんの生き方は日本中を魅了した。

1980年に始まった「ムツゴロウとゆかいな仲間たち」はあっという間に人気番組になり、平均視聴率は20%に迫った。

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しかしTVシリーズは2001年に終了し、2000年代後半には北海道の中標津から東京のあきる野市に移転した「ムツゴロウ動物王国」も閉園。

3億円とも言われる巨大な借金を抱えたが、それもあふれるバイタリティで完済し、現在は40年前に移り住んだ北海道の中標津にある大自然に囲まれたログハウスで生活している。

トレードマークの黒ブチ眼鏡にやさしい声の“ムツゴロウ”さんは、ゆっくり椅子に腰掛けると、煙草を一服しながら、破天荒な人生について語り始めた。

 

高木 解析概論 改訂第三版 _03

▲高木貞治「解析概論」の3ページ目

議論の前提として、デデキントの切断について説明している

このような説明と議論が、延々と500ページも続くのだが

高校生のムツゴロウは、易々と読みこなしたらしい

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読書 脳を通って私が生まれるとき

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このところ他にいろいろしたいことがあって、本を読んでも読書ノート(感想文、書評)を書くのをサボっている訳ですが、この本は久しぶりに印象が深かったので、書くことにします

著者は、京大医学部出身の精神科医で、臨床では主にてんかん患者を診ているようですが、人間の意識の成立について、広く興味を持って研究しているようです

本書は表題にもあるとおり、人間の脳がいかにして私(意識、自意識、こころ)を生み出すのかを、精神医学、生物学、心理学、哲学などの知見を引用しながら説明しています

人間にとって最大の謎の一つが、なぜ自分は自分(私のこころ)なのか?、ということ

私は私であって、私以外の他人とは別な存在だという感覚(自意識)は、ごく幼い乳幼児や、痴ほう症の老人、重篤な精神病患者などを除いて、ほとんど全ての人が持っているが、これ(自意識)はどこから生まれるのか?

自然科学が発達する以前には哲学者が、人間には生気や霊があって、これが自意識の本質だなどと説明してきました

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宗教家は、神が人間だけに、神に似せて精神や理性を与えたのだ、などと説いてきた

これを大転換するきっかけは、デカルトの人間機械論(オートマトン)で、人間の理性は脳の機械的なメカニズムの現れに過ぎないと主張した(彼は霊の存在も否定しなかったが)

人間機械論の流れは、現在の脳科学や精神医学の主流となり、人間の精神活動(感覚、認識、感情、意志、運動、言語、空間把握など)を細かく分けて、これらを脳の一定の場所に特定する研究が進んでいる

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たとえば、言語能力は、脳の言語中枢という場所に「ある」みたいな

聖書の「はじめに言葉あり」で、神が人間に言葉を与えたみたいな説明に比べると、ずっと「分かった」気分になる

これはまさに自然科学が最も得意とするアプローチであって、対象を細かく分けて研究するが、その大前提として、全体機能(ここでは自意識)を「部分機能の総体」であると考えている(還元している)

つまり

全体機能(自意識)=脳の部分機能の総体(合計)

著者は本書で、この考え方に少しアンチテーゼを唱え

全体機能(自意識)=脳の部分機能の総体(合計)+アルファ

ではないかと考えているようだ

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この「+アルファ」は、脳の部分機能に還元できない、脳全体が創り出している「何か」なのだが、何しろ分析できない(しにくい)何かなので、自然科学的(医学的)アプローチの対象にしにくい

大昔の哲学者や宗教家は、これを「生気」「霊」「神」などと呼んできたが、これでは何のことやら分からない

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そこで著者は、最も単純な生物、単細胞生物のゾウリムシとか、脳が無いと言われているクラゲなどを観察しながら、この「何か」(おそらく人間の心や自意識の最も核心)の成立の中身を追求している

このようにまとめると簡単になるが、本書の実際の説明は、医学研究者が書いただけに、実に微に入り細にわたり、専門用語も飛び出して、現在の脳科学の最先端の空気が伝わって来るような感じがする

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最近亡くなった立花隆(←)は、晩年は脳科学に興味を持っていたみたいだけど、この辺だったのかな?

(^_^;)

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読書 手塚治虫「ブッダ」

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手塚治虫(→)がブッダの一生を描いた有名な作品

全14巻3000ページ以上、一気に読みましたが、重厚な読み応えでした

以前に一度読んだような気もするのですが(途中までかもしれない)、ほとんど内容を忘れていたので、新鮮な気分で読めました

仏教書は哲学っぽい本が多いのですが、本書は大河ドラマのようにブッダの一生を描いていて、子どもでもそれなりに楽しめるようになっています

前半は、若いブッダが悟りに至るまでに迷いと苦悩の日々

後半は、多くの教祖がそうであるように、世間の無理解と弾圧に遭いますが、それらに対してガンジーのように非暴力で対応し、信者を得て教団を大きくしていきます

世界を征服していこうとする男性的な一神教(ユダヤ・キリスト・イスラム教)に対して、自分を世界に溶け込ませ一体化しようとする女性的な仏教

私は仏教信者ではありませんが、聖徳太子以来1000年以上、仏教の教えは日本人の生活や思考、行動様式、文化などに深く浸み込んでいるので、気が付くと仏教の価値観で読んでいる自分がいたりします

(^_^;)

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「ブッダが考えたこと」へ

 

読書「ブッダが考えたこと」哲学としての仏教

ブッダが考えたこと 仏教のはじまりを読む (角川ソフィア文庫)_01

 

ブッダ(仏陀)は、本来は「目覚めた人」の意

言うまでも無く、仏教の創始者「お釈迦さま」であり、本名は「ゴータマ・シッダールタ」で、インドの地方豪族であったゴータマ族の王子、シッダールタさんということになっている

実在した人物であったことは、ほぼ間違いがないとされているが、生没年について正確なことは不明で、紀元前5~7世紀の人であろうと言われている

著者は、インド哲学の研究者で、お坊さんや仏教信者ではなく、あくまでもインド哲学の一つとして、バラモン教、ジャイナ教などとも比較しながら、かなり冷静に「哲学としての仏教」を扱っている

特にインド哲学の根幹である輪廻説(りんねせつ)の説明は、著者独自の見解も含まれていて、読みごたえがある

本書を読む前から感じていたことではあるが、仏教は哲学としてみると、非常に奥が深い

ブッダ本人の言葉に最も近い「スッタニパータ」などの原始仏典を見ても、認識論や存在論について、非常に高度な哲学を展開している

別にキリスト教を馬鹿にするつもりは無いが、原始仏典に比べると、聖書の哲学は子供じみている

宗教は、必ずしも哲学である必要は無いから、それはそれで構わない

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ブッダは、若い頃に人間の生老病死の苦について深く悩み、将来の王になる身分を捨てて出家し、苦行や瞑想を経て、菩提樹の下で悟りを得たとされている

重要なのは、この「悟りを得た」の具体的な内容だ!

何を、どのように考えて、どのような結論に至ったのか?

どのような結論ならば、「悟りを得た」と言えるのか?

この最も重要な点で、多くの仏教書の説明は、曖昧模糊としている

それもそのはずで、多くの仏教書の著者は、お坊さんや仏教信者で、教祖であるブッダの思索について、余り具体的に突っ込んで記述することを避けているきらいがある

教祖というものは、神秘的な雰囲気を帯びていた方が、信者にとっては信仰のしがいがあるということかもしれない

お坊さんや仏教信者は、特定の宗派(浄土真宗とか日蓮宗とか)に属しているから、その宗派の教え(教学)との兼ね合いもある

余り自由奔放に原始仏教について語ると、属している宗派内での、自分の立場が悪くなる恐れもある

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私は敬虔な仏教信者ではない

葬式や墓参り、あるいは旅や散歩でお寺に行くことはあるが、信仰心は平均的な日本人と余り変わらない(それ以下かもしれない)

私は仏教信者ではないが、哲学者としてのブッダの思索(哲学)には大いに興味があるので、この点で従来の仏教書には、少々物足りないものを感じていた

かと言って、「スッタニパータ」などの原始仏典を読むと、ブッダが一般の衆生に向けて分かりやすく説明するために、非常に多くのたとえ話などが混じり、文章も冗長だ

そのために、哲学的な思索の焦点が、ややボケているようにも感じられる

そのものズバリ、ブッダは2700年くらい前に、何を考え、何を結論としたのか?

本書は、それに対する答えを、私が今までに読んだどの仏教書よりも、ストレートに説明しているように感じた

追記

私は敬虔な仏教信者ではないが、海外旅行などで書類に「religion(宗教)」の欄があったら「Buddhist(仏教徒)」と記入している

「Muslim(イスラム教徒)」などと書くとテロリストと疑われそうだし、「Jewish(ユダヤ教徒)」では差別されそうだ

「No religion(無宗教)」が最悪で、キリスト教徒から、悪魔を見るような目で見られかねない

「Buddhist(仏教徒)」が一番無難なのだ

(^_^;)

 

読書 「がまん」するから老化する

「がまん」するから老化する (PHP新書)_01

著者は東大医学部出身の精神科医で、一般向け健康書をたくさん書いている、「売れっ子」健康作家

本業で長年、老人病院(本当に65歳未満は受診できない珍しい病院)で働いていた

間違った健康常識にとらわれた、下手な「がまん(節制)」やダイエットが、逆に老化を進めてしまうとして警告を発している

最近は肉が健康に良いという説が世の中に増えているが、この著者が最初に言い出したのかな?

日本人の寿命が劇的に延びて、しかも見た目も若返ったのは、高度成長期以降で、ちょうど日本人が肉を食べ始めた時期に一致する

それ以前、サザエさんの磯野波平氏のように、54歳は完全に老人だった

定年は55歳で、男の平均寿命は65歳くらいだった

いまどき54歳の人を老人扱いしたら、ギョっとされるだろう

アメリカ人のように、肉ばかり大量に食べていれば良くないが、肉と魚をバランスよく食べることは、非常に健康に良いと力説している

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実は肉と魚を両方、日常的にバランスよく食べている国は、世界でもそれほど多くはなく、日本以外では、フランス、イタリア、スペインくらいだそうだ

著者が絶対にダメ(完全に有害)!と断言しているのはタバコくらいで、いわゆる「飲む打つ買う」、酒、ギャンブル、恋愛や不倫、風俗、SEXなどは、がまんしないで適度にたしなんだ方が、アンチエイジングには良いとしている(家庭内の波乱は、医者なので専門外)

バイアグラは健康に良いので毎日飲め、とも言っている

ホンマかいな~?

(^_^;)

著者のHPへ

 

読書 天才たちのライフハック

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天才たちのエピソードを集めた本

内容は薄いが、読み易くて面白いので、つい最後まで読んでしまった

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左の表紙にも書いてあるが、アップル社の創設者であるスティーブ・ジョブズ(→)は、スマートなプレゼンからは想像しにくいが、非常に泣き虫だった

会議などで、自分の話が相手に伝わらないだけで、よく泣いていたそうだ

ナポレオン(↓)は超が付くほどの読書好きで、常に特製の図書館馬車に大量の本を積んで、戦場に向かっていたという

(^_^;)

 

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読書 右脳の冒険

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コリン・ウイルソンが、人間の意識の構造について書いた「フランケンシュタインの城」の続編(実践編)ともいうべき作品

人の意識に関する私の問題意識の原点は

「天国は人の心の中に存在する

 地獄もまた同様である」

という言葉に要約される

天国が人の心の中にあるか、西方浄土にあるか、宇宙のかなたにあるか、そんなことよりまず

「私は天国の住人になりたい!」

ということなのだ

すると、西方浄土や宇宙ではなく、自分の心(脳)の中に天国があるのなら、もしかすると天国の住人になるということは、自分の意志の力で可能なのではないか?という問題意識が生じる

本書は、この問題意識に対する解答を提供しようとしている

 

徒然草

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徒然草の中のお気に入り(13段)

 額に入れて壁に掛けています

(^_^;)

 

ひとり燈のもとに文をひろげて

見ぬ世の人を友とするぞ

こよなう慰むわざなる 

 

ひとり淋しく 明かりの下で本を広げて

昔の作者たちと 友情関係を育むことは

楽しくて 心が穏やかになる

 

読書 この人を見よ 天才の3条件

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ニーチェが44歳で、発狂する直前に著した、自叙伝のような、一種の著作目録

このときのニーチェは理解者を失い、非常に孤独だったが、自分の思想の重要性は深く自負していたので、自分に注目しない世間に「私に注目せよ!」という叫びを発していて痛々しい

 1)噴出するような創造力

 2)同時代人に理解されない

 3)狂気と紙一重

という天才の3条件に見事に適合している

脳(おそらく右脳)から噴き出すような直観と情動を、知性(左脳)がかろうじて文章化したような作品群

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あの「ツァラトゥストラ」全4部を、各部10日程度で書き上げていることからも、その噴出の速さと激しさがうかがわれる

私はまだ「ツァラトゥストラ」と本書だけなのだが、激しく情動を揺さぶられるような読後感が残る

本書の読後に、手塚富雄「ニーチェの人と思想」(中公「世界の名著・ニーチェ」所収)を再読して彼の人生をたどり直してみたが、まさしく「天才はつらいよ」という悲壮感に満ちている

(^_^;)

 

 

読書「シッダールタ」川の流れから学ぶ

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ブッダ(ゴータマ・シッダールタ)の伝記小説かと思ったら、そうではなく、ブッダも登場するが、主人公シッダールタとは別人物

若き日に人生に悩み、出家して恵まれた生活を捨てるところはブッダと共通だが、その後の展開は還俗して恋をしたりカネを儲けたりと激動する

しかしシッダールタの心は満たされず、再び全てを捨てて、川のほとりで渡し守となる

鴨長明の「発心集」には、大きな寺の高僧(玄賓僧都、げんぴんそうず)がある日突然、全てを捨てて貧しい渡し守になる話が出てくるが、それが連想される

書物や人からではなく、川の流れから学ぶという考え方も、方丈記の「ゆく川の流れは絶えずして・・・」を思い出させる

人生に大切なことは、所有することでも、知ることでもなく、体験することにあると考え、ブッダのような悟りを追体験しようとして、シッダールタは苦闘する

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文学作品として非常に完成度が高く、小説でありながら詩のように美しい文章は、ノーベル賞作家ヘッセの、詩人としての才能が輝いている

キリスト教徒であるヘッセが書いているので、輪廻転生や涅槃といった仏教思想に、原罪や愛といったキリスト教思想が混入しているが、これはこれで面白い

(^_^;)

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