サウジアラビアの空爆で破壊された家を見つめる男性(サナア2015年9月9日)
近年、中東のアラビア半島にある共和制国家イエメンでは苛烈な内戦が続いている。
暫定大統領アブド・ラッボ・マンスール・ハーディー(写真左)と、イスラム武装組織フーシと連携する前大統領アリー・アブドッラー・サーレハ(写真右、2017年12月殺害)の対立は、国内に甚大な被害をもたらした。
事態に収拾がつかず混迷を極めるのは、この内戦がイエメンの政治、宗教、文化と密接に関わっているからだ。
例外なく中東情勢は、宗教と政治が内戦を後押しする。
諸外国がイエメンに介入し、代理戦争の様相を呈しているのは、シリアに限ったことではない。
暫定大統領ハーディと前大統領サーレハの対立の裏では、各国がイエメンを奪い合っている構図がある。
日本の天皇制のような、国家統一、民族統一の中心が無いので、簡単に内戦になる。
現在の内戦により、各部族(幕末の日本で言えば「藩」)が、自分たちの利益になるようバラバラに動いている。
軍隊としてハーディ政権につく部族もあれば、フーシ側に回ったり、独立自治を掲げるたりする部族もいる。
さらに、アルカイダやISIS(イスラム国)もこの混乱に乗じて支配地域を得ようとしている。
150年前の今ごろ 日本も外国の介入を受けて
泥沼の内戦に突入するおそれがありました
内戦は国家間の戦争よりも 残酷で悲惨です ((((;゚д゚))))
サウジアラビア主導の空爆が軍施設を破壊し、破片と煙が立ち上る(サナア市 2015年月9日12日)
サウジアラビア、ハミース・ムシャイト航空軍事基地のF-15戦闘機とパイロット(2015年11月16日)
少女が周囲の喧噪の中で水を汲んでいる。多くの空爆に晒されるサナア市周辺は、特に深刻な水不足にある(サナア市 2015年11月25日)
(マアリブ市 2015年11月3日)
この家を破壊した空爆では4人が死亡し、他数名の怪我人を出した。
(サナア市 2015年12月29日)
(サナア市 2015年9月11日)
(フダイダ町 2016年1月6日)
(マリブ市 2015年12月21日)
(タイズ市 2015年12月16日)
11. サウジアラビア主導の空爆により軍学校から黒煙が上がっている
(サナア市 2015年9月20日)
12. サウジアラビア軍の砲兵がイエメン上空を飛ぶヘリコプターから敵の攻撃を見ている様子。サウジアラビア連合軍は「反乱分子」の重火器施設を重点的に空爆している(サナア市 2015年9月17日)
13. サウジアラビア主導の空爆によって炎と煙が立ち上る
(サナア市 2015年9月17日)
14. イエメンの事実上の大統領、アブド・ラッボ・マンスール・ハーディー(中央)が関係者と共にアデン港を歩く様子。暫定政府はアルカーイダやイスラム系過激派組織の襲撃に備え、夜間外出禁止令を発令した。ハーディの後ろでピースをしている場合ではない(アデン市 2016年1月4日)
15. 爆弾を積んだ車による自爆テロの後。これにより、アデン市の知事、ジャファル・ムハンマド・サアド(Jaafar Mohammed Saad)が死亡した。ジャファル知事の乗り込んだ車に、爆弾を積んだ車が激突し爆発。爆発した側は粉微塵になり跡形も残っていない(アデン市 2015年12月6日)
16. サウジアラビア主導の空爆により破壊された自分の家を調べる男性
(サナア市 2016年1月8日)
17. 負傷したイエメン人を助ける人々。彼はスーダンに移送され病院で治療を受けている(スーダン 2015年9月5日)
18. サウジアラビア主導の空爆により破壊された家の中で立ちつくす少年
(サナア市 2015年9月11日)
19 フーシ側を援助する部族会議を護衛するため、フーシ兵士が武器を構えている(サナア市 2015年10月22日)
20. フーシ部隊と戦闘中、部族兵が配置についている
(タイズ市 2015年11月16日)
21. 暫定大統領のアブド・ラッボ・マンスール・ハーディーのポスターを踏みつける男性(サナア市 2016年1月3日)
22. サウジアラビア主導の空爆に抗した対空砲の砲撃
(サナア市 2015年9月26日)
23. サウジアラビア主導の空爆で身内を失い、泣き叫ぶ男性
(サナア市 2015年9月21日)
24. 内戦により破壊された大統領宮殿(アデン市 2015年9月27日)
イランとサウジアラビアの対立、アメリカの介入、イエメン国内の部族関係や不安定な政情が複雑に絡み合った混乱は、2016年になった現在でも平定される気配はない。
このまま事態がエスカレートすれば、周辺諸国を巻き込み戦火が拡大する危険性は大いにある。
日本は、湾岸協力理事会(GCC)加盟国との協力関係を築き、多額の支援プレッジを行うなどイエメン新政権の安定に向けた努力を積極的に支援する姿勢を示している。
また、イエメンの民主化、テロ対策、貧困削減等において欧米ドナー諸国との関係強化を目指している。(外務省「イエメン基礎データ」)
参考:フーシとイエメンの歴史
フーシとは、イスラム教シーア派系のひとつ、ザイド派から分派した一派。前大統領サーレハの弾圧により1990年代に立ち上げられた過激派武装集団でもある。
サーレハ政権打倒のために6度蜂起をするも失敗。その後、「アラブの春」と呼ばれるアラブ諸国において発生した反政府デモに影響を受け、独裁政権であったサーレハは一旦大統領職を退く。フーシの目的は果たされたかに見えたが、後継の大統領ハーディが制定した新憲法に反発。
前大統領サーレハと利害関係が一致したため手を組み、今度はハーディ政権打倒をもくろむ。2015年1月に首都サナアを陥落させクーデターを成功させたが、ハーディは南部でサウジアラビアやアメリカの援助を受け暫定政府を発足。フーシはイランの支援を受け、イエメン全域の支配を推し進めている。イスラム系過激派ではあるが、アルカーイダやISISとは敵対関係にある。
via:Yemen’s Unending Chaos・translated by はっち / edited by parumo