かつての米ソ冷戦では
日本は漁夫の利を得ましたが
今度はうまくいくかな? (^_^;)
香港民主人権法、香港自治法に署名したトランプ大統領。
そして香港優遇措置の廃止。
これらは戦前の「ハル・ノート」に匹敵するのではないか。
日米激突の最終局面は、ABCD包囲網。
その挙げ句がハルノートという事実上の宣戦布告だった。
日系人の強制収容所入りと在米資産の没収があった。
後者は「留学封鎖」(中国人留学生ヴィザ条件の規制強化)、企業ならびに大学ラボ、大学院からの中国人排斥、スパイ容疑での逮捕。
そしてファーウェイ社員へのヴィザ発給中止。
ついには中国共産党員の米国入国禁止の検討。
まさしく、戦前のFDR政権が日本を追い込んだプロセスに酷似してきた。
交換船でそれぞれ在留人を送還した。
トランプ政権下の対中封じ込め作戦、最初は貿易戦争だった。
実質的には高関税を掛けて、中国が世界の工場の地位からずるっと後退させ、外国企業のみならず中国企業さえも、賃金の安いベトナム、カンボジア、タイ、バングラなどへ生産拠点を移動させた。
サプライチェーンの大がかりな改編が始まった。
とはいえ米国市場に溢れる中国製品は雑貨、アパレル、スポーツシューズからXマスカードまで。
代替生産をほかの市場では短時日では出来ない。
ゆえに貿易戦争は続行される。
アキレス腱はいくつかあるが、第一に医薬品。マスクに代表される医療関連、ならびに製薬、その薬剤生産が中国に握られていること。
第二がスマホ、コンピュータに欠かせないレアアースだ。
いずれも米国などで埋蔵があるが、発掘、精製など「汚い仕事」を中国に任せてきたツケがまわった。
実業界の対応が鈍いのは日米共通である。
GMなど米国企業は、いきなり中国とのサプライチェーンを断ち切れないで立ち往生している。
GAFAも最終決定を出しかねている。
サプライチェーンの改編にはどうしても五年の歳月が必要だろう。
日本企業に到っては、ことここに到るもサプライチェーンの変更を考えていないばかりか、トヨタや本田のように、国投資を増やし、工場を増設するところがある。
中国との商いを続けるとしているのが、中国へ進出した日本企業の70%である。
ついで次世代ハイテクの争奪戦争だった。
米国はELリストを作成し、現在までに85の中国企業をブラックリストに載せた。
中国資本の米国企業買収を安全保障の理由から阻止し、スパイに目を光らせ、ファーウェイ、ZTE、ハイクビジョン、ダーファなど中国企業との取引を8月14日から禁止する。
これは二年前の国防権限法に明記されていた。
日本企業はのほほんと何も対策を講じなかった。
撤退して日本に工場を移したのはスタンレー電気だけ。
上記五社と取引のある日本企業は800社。
いずれ「第二の東芝ココム事件」に類することがおこるだろう。
5G開発で中国のリードに焦る米国は、一方において6G開発を宣言し、他方では断固として中国人スパイのハイテク窃取阻止に動いた。
象徴的な事件はファーウェイCFO孟晩舟を「イランへの不正輸出に関与した」との理由をつけてカナダに拘束させ、リチャード・リーバー・ハーバード大学教授の中国代理人としての行為を起訴に持ちこんだことだ。
中国の「千人計画」の全貌が明らかとなった。
内偵をうけていたスタンフォード大学の張首晟教授はサンフランシスコで謎の「自殺」を遂げた。
以前から筆者は
「次に米国が仕掛けるのは金融戦争だ」
と予測してきたが、こんどの「香港自治法」には金融機関への制裁、取引停止、ドル封鎖が含まれている。
金融戦争はドル封鎖(つまり中国はドル決済に支障をきたし、国際取引が出来なくなる)、そのために香港自治法には金融機関との取引停止が謳われているのだ。
米銀ばかりか、中国の四代銀行に融資した銀行は軒並み経営危機に陥る可能性がある。
FDRは宣戦布告前からフライングタイガーを「志願兵」を募り、中華民国空軍として参戦していた。
いま、これに匹敵するのが台湾への武器供与である。
米中激突の最終局面が「戦争」だと言っても、重火器、武器をともなう戦争には到らない。
万一に備えて米国は真珠湾攻撃を待っているかのように南シナ海から東シナ海、とくに台湾海峡へ空母攻撃軍を派遣し、空には偵察機、戦略爆撃機を飛ばして「自由航行作戦」を展開している。
英国海軍の新鋭空母クイーンエリザベスも、南シナ海へ派遣される。
豪、インド海軍も米軍との共同軍事演習に加わり、日本も参加する。
しかし中国は金融戦争での「真珠湾」に値する次なる攻撃は、おそらく武器をともなわない手段で、挑戦してくるはずだ。
ハッカー、サイバーを駆使してのウォール街の混乱。
金融取引でのデジタル戦争、しかし過去の中国からの執拗なハッカー攻撃を受けて、米国は十分に対策と傾向を研究してきた。
中国軍のハッカーの手口を米国は掌握した。
仕掛けられたときに、その報復手段は、整えていると思われる。
中国の報復は、NYタイムズ、ウォールストリートジャーナルなどの米人記者の追放、米国系外食チェーンへの立ち入り検査という嫌がらせ、ルビオ、クルーズ議員らへの名指しの制裁予告ていどだ。
これでは、まだ蚊にさされた程度である。
豪やカナダになした嫌がらせの強さに比べれたら、米国には手を出しかねているようにも見えるが、舞台裏では選挙妨害のためにハッカー、フェイク情報流布などを国籍を偽って仕掛けている。
冷戦終結以後、米国の敵はサダム、IS、ビンラディン、バグダディなど、小粒の標的でしかなかった。
しかし、こんどは巨大なフランケンシュタインが相手である。
「これは単なる恫喝ではない。中国はこのリアルを理解し、
本気で準備をしておかなければならない」
との警告が中国の担当部署の本丸、「中国証券監督監査委員会」からでた。
方星海は清華大学から米国留学、奨学金でスタンフォード大学などで現代経済学を学び、周小川(当時、中国人民銀行総裁)に見出された。
それゆえ発言が注目され、2019年のダボス会議では中国金融界を代表してスピーチを行った大物である。
現在、国際取引での通貨シェアはSWIFT(国際支払い管理システム)の調べで米ドルが40・88%、ユーロが32・8%,日本円は3・53%に対して中国人民元はかすかに1・79%でしかない。
方星海は
「人民元で国際取引ができる方策を早急に整え、増やしておかなければ
ドル決済システムからはじかれることになる」
と警告した。
トランプの金融戦争の次の手を正確に予測しているからこそ飛び出した発言である。
ならば勝負を決める原爆は何か?
香港のドルペッグ制が最終の標的である。
中国四大銀行との取引停止、ドル交換停止を香港自治法では謳っているが、香港優遇政策の廃止に「香港ドルと米ドルのペッグ制」に関して、どうするのか、米国側からは一言も言及がないのである。
つまり、今回のトランプの措置は、ピンポイント空爆であり、まだ序幕戦の段階である。
「宮崎正弘の国際情勢解題」より