武漢ウイルスに関する基本方針 日本政府

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日本政府は25日、肺炎を引き起こす武漢ウイルスに関する感染症対策本部会合を首相官邸で開き、国内でのさらなる感染拡大に備え、総合的な基本方針を決定し、公表した。

全文は次の通り。

 

 

 

武漢ウイルスに関する総合的な基本方針 日本政府

 

 

【1.現在の状況と基本方針の趣旨】

武漢ウイルス感染症については、これまで水際での対策を講じてきているが、ここに来て国内の複数地域で、感染経路が明らかではない患者が散発的に発生しており、一部地域には小規模患者クラスター(集団)が把握されている状態になった。

しかし、現時点では、まだ大規模な感染拡大が認められている地域があるわけではない。

感染の流行を早期に終息させるためには、クラスター(集団)が次のクラスター(集団)を生み出すことを防止することが極めて重要であり、徹底した対策を講じていくべきである。

また、こうした感染拡大防止策により、患者の増加のスピードを可能な限り抑制することは、今後の国内での流行を抑える上で、重要な意味を持つ。

あわせて、この時期は、今後、国内で患者数が大幅に増えた時に備え、重症者対策を中心とした医療提供体制等の必要な体制を整える準備期間にも当たる。

このような武漢ウイルスをめぐる現在の状況を的確に把握し、国や地方自治体、医療関係者、事業者、そして国民が一丸となって、武漢ウイルス感染症対策を更に進めていくため、現在講じている対策と、今後の状況の進展を見据えて講じていくべき対策を現時点で整理し、基本方針として総合的にお示ししていくものである。

まさに今が、今後の国内での健康被害を最小限に抑える上で、極めて重要な時期である。

国民の皆様に対しては、【2】で示す武漢ウイルス感染症の特徴を踏まえ、感染の不安から適切な相談をせずに医療機関を受診することや感染しやすい環境に行くことを避けていただくようお願いする。

また、手洗い、咳エチケット等を徹底し、風邪症状があれば、外出を控えていただき、やむを得ず、外出される場合にはマスクを着用していただくよう、お願いする。

【2.武漢ウイルス感染症について現時点で把握している事実】

・一般的な状況における感染経路は飛沫感染、接触感染であり、空気感染は起きていないと考えられる。閉鎖空間において近距離で多くの人と会話する等の一定の環境下であれば、咳やくしゃみ等がなくても感染を拡大させるリスクがある。

・感染力は事例によって様々である。一部に、特定の人から多くの人に感染が拡大したと疑われる事例がある一方で、多くの事例では感染者は周囲の人にほとんど感染させていない。

・発熱や呼吸器症状が1週間前後持続することが多く、強いだるさ(倦怠感)を訴える人が多い。また、季節性インフルエンザよりも入院期間が長くなる事例が報告されている。

・罹患しても軽症であったり、治癒する例も多い。重症度としては、致死率が極めて高い感染症ほどではないものの、季節性インフルエンザと比べて高いリスクがある。特に、高齢者・基礎疾患を有する者では重症化するリスクが高い。

・インフルエンザのように有効性が確認された抗ウイルス薬がなく、対症療法が中心である。また、現在のところ、迅速診断用の簡易検査キットがない。

・一方、治療方法については、他のウイルスに対する治療薬等が効果的である可能性がある。

【3.現時点での対策の目的】

・感染拡大防止策で、まずは流行の早期終息を目指しつつ、患者の増加のスピードを可能な限り抑制し、流行の規模を抑える。

・重症者の発生を最小限に食い止めるべく万全を尽くす。

・社会、経済へのインパクトを最小限にとどめる。

【4.武漢ウイルス感染症対策の基本方針の重要事項】

<1>国民・企業・地域等に対する情報提供

(1)国民に対する正確で分かりやすい情報提供や呼びかけを行い、冷静な対応を促す。

・発生状況や患者の病態等の臨床情報等の正確な情報提供

・手洗い、咳(せき)エチケット等の一般感染対策の徹底

・発熱等の風邪症状が見られる場合の休暇取得、外出の自粛等の呼びかけ

・感染への不安から適切な相談をせずに医療機関を受診することは、かえって感染するリスクを高めることになること等の呼びかけ 等

(2)患者・感染者との接触機会を減らす観点から、企業に対して発熱等の風邪症状が見られる職員等への休暇取得の勧奨、テレワークや時差出勤の推進等を強力に呼びかける。

(3)イベント等の開催について、現時点で全国一律の自粛要請を行うものではないが、専門家会議からの見解も踏まえ、地域や企業に対して、イベント等を主催する際には、感染拡大防止の観点から、感染の広がり、会場の状況等を踏まえ、開催の必要性を改めて検討するよう要請する。

(4)感染が拡大している国に滞在する邦人等への適切な情報提供、支援を行う。

(5)国民、外国政府および外国人旅行者への適切迅速な情報提供を行い、国内での感染拡大防止と風評対策

につなげる。

<2>国内での感染状況の把握(サーベイランス《発生動向調査》)

ア)現行

(1)感染症法に基づく医師の届け出により疑似症患者を把握し、医師が必要と認めるPCR検査を実施する。患者が確認された場合には、感染症法に基づき、積極的疫学調査により濃厚接触者を把握する。

(2)地方衛生研究所をはじめとする関係機関(民間の検査機関を含む)における検査機能の向上を図る。

(3)学校関係者の患者等の情報について都道府県の保健衛生部局と教育委員会等部局との間で適切に共有を行う。

イ)今後

○地域で患者数が継続的に増えている状況では、入院を要する肺炎患者の治療に必要な確定診断のためのPCR検査に移行しつつ、国内での流行状況等を把握するためのサーベイランスの仕組みを整備する。

<3>感染拡大防止策

ア)現行

(1)医師の届け出等で、患者を把握した場合、感染症法に基づき、保健所で積極的疫学調査を実施し、濃厚接触者に対する健康観察、外出自粛の要請等を行う。地方自治体が、厚生労働省や専門家と連携しつつ、積極的疫学調査等により、個々の患者発生をもとにクラスター(集団)が発生していることを把握するとともに、患者クラスター(集団)が発生しているおそれがある場合には、確認された患者クラスター(集団)に関係する施設の休業やイベントの自粛等の必要な対応を要請する。

(2)高齢者施設等における施設内感染対策を徹底する。

(3)公共交通機関、道の駅、その他の多数の人が集まる施設における感染対策を徹底する。

イ)今後

(1)地域で患者数が継続的に増えている状況では、

・積極的疫学調査や、濃厚接触者に対する健康観察は縮小し、広く外出自粛の協力を求める対応にシフトする。

・一方で、地域の状況に応じて、患者クラスター(集団)への対応を継続、強化する。

(2)学校等における感染対策の方針の提示および学校等の臨時休業等の適切な実施に関して都道府県等から設置者等に要請する。

<4>医療提供体制(相談センター/外来/入院)

ア)現行

(1)武漢ウイルスへの感染を疑う方からの相談を受ける帰国者・接触者相談センターを整備し、24時間対応を行う。

(2)感染への不安から帰国者・接触者相談センターへの相談なしに医療機関を受診することは、かえって感染するリスクを高めることになる。このため、まずは、帰国者・接触者相談センターに連絡いただき、武漢ウイルスへの感染を疑う場合は、感染状況の正確な把握、感染拡大防止の観点から、同センターから帰国者・接触者外来へ誘導する。

(3)帰国者・接触者外来で武漢ウイルス感染症を疑う場合、疑似症患者として感染症法に基づく届出を行うとともにPCR検査を実施する。必要に応じて、感染症法に基づく入院措置を行う。

(4)今後の患者数の増加等を見据え、医療機関における病床や人工呼吸器等の確保を進める。

(5)医療関係者等に対して、適切な治療法の情報提供を行うとともに、治療法・治療薬やワクチン、迅速診断用の簡易検査キットの開発等に取り組む。

イ)今後

(1)地域で患者数が大幅に増えた状況では、外来での対応については、一般の医療機関で、診療時間や動線を区分する等の感染対策を講じた上で、武漢ウイルスへの感染を疑う患者を受け入れる(なお、地域で協議し、武漢ウイルスを疑う患者の診察を行わない医療機関《例:透析医療機関、産科医療機関等》を事前に検討する)。あわせて、重症者を多数受け入れる見込みの感染症指定医療機関から順に帰国者・接触者外来を段階的に縮小する。

風邪症状が軽度である場合は、自宅での安静・療養を原則とし、状態が変化した場合に、相談センター又はかかりつけ医に相談した上で、受診する。高齢者や基礎疾患を有する者については、重症化しやすいことを念頭において、より早期・適切な受診につなげる。

風邪症状がない高齢者や基礎疾患を有する者等に対する継続的な医療・投薬等については、感染防止の観点から、電話による診療等により処方箋を発行するなど、極力、医療機関を受診しなくてもよい体制をあらかじめ構築する。

(2)患者の更なる増加や武漢ウイルス感染症の特徴を踏まえた、病床や人工呼吸器等の確保や地域の医療機関の役割分担(例えば、集中治療を要する重症者を優先的に受け入れる医療機関等)など、適切な入院医療の提供体制を整備する。

(3)院内感染対策の更なる徹底を図る。医療機関における感染制御に必要な物品を確保する。

(4)高齢者施設等において、武漢ウイルスへの感染が疑われる者が発生した場合には、感染拡大防止策を徹底するとともに、重症化のおそれがある者については円滑に入院医療につなげる。

<5>水際対策

国内への感染者の急激な流入を防止する観点から、現行の入国制限、渡航中止勧告等は引き続き実施する。

一方で、検疫での対応については、今後、国内の医療資源の確保の観点から、国内の感染拡大防止策や医療提供体制等に応じて運用をシフトしていく。

<6>その他

(1)マスクや消毒液等の増産や円滑な供給を関連事業者に要請する。

(2)マスク等の国民が必要とする物資が確保されるよう、過剰な在庫を抱えることのないよう消費者や事業者に冷静な対応を呼びかける。

(3)国際的な連携を密にし、WHO や諸外国の対応状況等に関する情報収集に努める。また、日本で得られた知見を積極的に WHO等の関係機関と共有し、今後の対策に活かしていく。

(4)中国から一時帰国した児童生徒等へ学校の受け入れ支援やいじめ防止等の必要な取組を実施する。

(5)患者や対策に関わった方々等の人権に配慮した取組を行う。

(6)空港、港湾、医療機関等におけるトラブルを防止するため、必要に応じ警戒警備を実施する。

(7)混乱に乗じた各種犯罪を抑止するとともに、取締りを徹底する。

【5.今後の進め方について】

今後、本方針に基づき、順次、厚生労働省をはじめとする各府省が連携の上、今後の状況の進展を見据えて、所管の事項について、関係者等に所要の通知を発出するなど各対策の詳細を示していく。

地域ごとの各対策の切替えのタイミングについては、まずは厚生労働省がその考え方を示した上で、地方自治体が厚生労働省と相談しつつ判断するものとし、地域の実情に応じた最適な対策を講ずる。

なお、対策の推進に当たっては、地方自治体等の関係者の意見をよく伺いながら進めることとする。

事態の進行や新たな科学的知見に基づき、方針の修正が必要な場合は、武漢ウイルス感染症対策本部において、専門家会議の議論を踏まえつつ、都度方針を更新し、具体化していく。

以上

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