▲B1Bランサー戦略爆撃機
北朝鮮が北方限界線(NLL)を越えるミサイルを発射した挑発への対抗措置として、韓国軍は11月2日、NLLの北側に空対地ミサイルを発射した。
韓国軍がNLLの北側にミサイルを発射するのは、朝鮮戦争以来のこと。
韓国軍合同参謀本部はこの日
「韓国軍は今日、北朝鮮による短距離弾道ミサイル発射に対抗し、空軍による精密空対地ミサイル射撃を実施した」
「NLL以北の公海上、北朝鮮が挑発したミサイルの落下地点に相応する距離の北側海上に向け、空軍のF15KとKF16から精密空対地ミサイル3発を発射した」
と発表した。
今回発射されたミサイルは、長距離空対地ミサイルの改良型となるSLAM/ER(→)など。
韓国軍は2010年の延坪島砲撃挑発の時も戦闘機を出撃させたが、このときは実際の射撃は行わず、K9自走砲による反撃にとどめた。
そのため今回は北朝鮮による前例のない挑発に韓国軍も前例のない対抗措置を取ったとされている。
合同参謀本部は
「今回のわが軍による精密射撃は、
北朝鮮のいかなる挑発にも断固たる対応を取る意志、
そして敵を正確に攻撃できる能力と態勢を持つことを示した」
「今後発生する全ての事態に対する責任は全面的に北朝鮮にある」
と明言した。
ある韓国軍関係者は
「NLLを越えてきた北朝鮮ミサイルは1発だが、
韓国軍は3発を発射した(3倍返し)。
これは断固たる意志と能力を示すためだ」
と説明した。
韓国軍による対抗措置は北朝鮮がミサイル挑発を敢行してから3時間後に行われた。
ただし韓国軍は束草沖合に落下した弾道ミサイルを迎撃はしなかった。
これについて上記の韓国軍関係者は
「着弾した海域の近くには江陵のパトリオット部隊がいたが、その射程距離からは外れていた」
「探知はしていたが、迎撃の範囲ではなかった」
と明らかにした。韓国大統領室の関係者も
「厳密に言えば韓国の領海ではなかったため、迎撃の対象ではなかった」
とコメントした。
今回北朝鮮ミサイルは韓国の迎撃ミサイルの射程圏外に落下したことから、迎撃される可能性を避けながら韓国の領土に脅威を与える、北朝鮮の緻密な挑発だったとみられる。
今後北朝鮮による挑発のレベルがさらに高まると予想されることから、韓国軍とその周辺では
「より実効性のある対抗措置を取るべきだ」
との声も上がっている。
韓国国防安保フォーラムの辛宗祐(シン・ジョンウ)事務局長は
「NLLの南からミサイルで対抗措置を取る方法もあるが、
北朝鮮が恐れるステルス戦闘機を使って
NLLの北側に爆弾を投下することも一つの対抗措置だ」
と提案する。
2017年に北朝鮮が相次いで挑発を行った際、米軍は戦略爆撃機B1BをNLL北側に飛ばした。
F15戦闘機の護衛を受けたB1Bは、約2時間にわたりNLLの北側にとどまった。
「死の白鳥」と呼ばれるB1Bは米国の3大戦略爆撃機で、至近距離から北朝鮮に武力示威を行うことで、北朝鮮へ強い警告のメッセージを送った。